Abstract

要旨開放性外傷や手術歴がない成人の恥骨骨髄炎は稀である。脆弱性左恥骨骨折の保存的加療中であった患者が,左恥骨骨髄炎と多発筋肉内膿瘍を発症し,敗血症性ショックとなった症例を経験した。脆弱性骨折の頻度が高い超高齢社会では,本症例と同様に脆弱骨折部分に感染を合併する症例の頻度が高くなる可能性が示唆されるため報告する。症例は76歳の女性。約4週間前に脆弱性左恥骨骨折と診断され保存療法が行われていた。搬送1時間前に突然の全身痛と呼吸困難感を訴え救急搬送された。画像検査で左恥骨融解像と恥骨に接する複数の筋肉内に膿瘍を認め,左恥骨骨髄炎および多発筋肉内膿瘍による敗血症性ショックと診断し得た。長期間の抗菌薬投与と外科的処置を行い,第85病日に転院となった。本症例は恥骨骨髄炎が原発巣であり,恥骨に付着する筋肉へ感染が波及して多発筋肉内膿瘍を形成したと推察した。骨髄炎の原因は,恥骨骨折周囲での血腫形成に,長期臥床に伴う褥瘡形成による菌血症が重なり,血腫感染を起こしたことが考えられた。脆弱性骨盤骨折は,保存療法により感染を伴わずに治癒する場合がほとんどだが,今回のように免疫不全となる既往歴がなくても骨折部分の骨髄炎を発症し,敗血症に至ることがある。骨髄炎はその頻度の少なさや非特異的な症状から診断が遅れる場合が多く,先行する骨折部位が骨髄炎を発症しうることを考慮して診療にあたる必要がある。

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