開腹手術で確定診断と治療を行った後腹膜膿瘍を合併した十二指腸水平脚潰瘍穿孔の1例(A case of perforated ulcer in third portion of duodenum with retroperitoneal abscess, which was diagnosed and treated by laparotomy)

Abstract

要旨 60歳の男性。腹痛・下痢・嘔吐出現3日目に前医受診し原因不明のイレウスと診断され保存的加療が行われた。症状出現9日目のCT検査で後腹膜膿瘍形成を指摘され，加療目的で当院に転院となった。同日，虫垂穿孔または十二指腸穿孔による後腹膜膿瘍を疑い開腹手術を施行し，約1cm大の十二指腸水平脚後壁穿孔を認めた。十二指腸穿孔部位は炎症性に肥厚し脆弱で，単純縫合や被覆は困難と判断し，十二指腸水平脚部分切除および十二指腸下行脚−空腸吻合をOverlap法で行った。術後経過は良好で，約8か月後の上部消化管内視鏡検査で十二指腸に発赤・びらんのみ認め，切除検体の病理学的な特記所見はなく，十二指腸水平脚潰瘍穿孔と診断した。十二指腸水平脚穿孔は頻度が低く，特異的所見に乏しいが，後腹膜膿瘍形成前の発症早期に穿孔部位の縫合閉鎖手術を行うことが望ましい。後腹膜膿瘍を合併した症例では，ドレナージ・外科手術による治療を状況に応じて行うべきであると考えられた。