空腸漿膜パッチおよび十二指腸憩室化にて救命しえた広範な外傷性十二指腸損傷の1例(A case of extensive traumatic duodenal injuries treated by jejunal patch and duodenal diverticulization)

Abstract

要旨症例は38歳の男性。腹部鈍的外傷にて当院に搬送された。精査の結果，十二指腸損傷と診断し，受傷後2時間半ほど経過した時点で緊急手術を行った。十二指腸下行部が2/3周かつ長径10cm以上にわたり広範に損傷していた。まず局所修復法として空腸漿膜パッチにて壁損傷部位を閉鎖し，さらに修復した十二指腸下行部の狭窄がみられたため幽門側胃切除および胃空腸吻合術（Roux–en–Y法での再建）による十二指腸憩室化を同時に施行した。術後20日で独歩退院となった。外傷性十二指腸損傷の手術治療は術後合併症，特に縫合不全発生の危険性が高く予後不良とされ，損傷部位が大きく複雑になるに従い困難を極める。空腸漿膜パッチは腸管壁損傷が広範な場合においても閉鎖修復が可能でありかつ安全性も高い。さらに同時に十二指腸憩室化を組み合わせたことで修復腸管径の狭小化に伴う縫合不全や腸管内圧上昇，通過障害を回避し，極めて良好な経過を得られたと考えられた。