交通外傷により腹腔内他臓器損傷を伴わない胆嚢損傷を来した1例―既報告27例の集計とともに―(Gallbladder perforation caused by a traffic injury: a case report)

Abstract

要旨胆嚢は解剖学的に外力の影響を受けにくいため，鈍的外傷による胆嚢損傷はまれであり，また他臓器損傷を伴う場合が多い。我々は腹腔内他臓器損傷を伴わない外傷性胆嚢損傷を経験したので報告する。症例は76歳の男性。飲酒後に路上で臥床中，自動車に轢かれたところを目撃され，当院救命救急センターに搬送された。CTにて肝表面，Morrison窩，右傍結腸溝に少量の腹水を認め，経過観察としたが，第3病日のCTで経時的な増加を認め，第4病日に緊急開腹手術を行った。胆嚢体部に穿孔を認めたが腹腔内他臓器には損傷を認めず，胆嚢摘出術，腹腔内ドレナージ術を施行した。術後経過は良好であった。胆嚢は外力を受けにくい臓器であるが，飲酒は胆嚢の緊満と腹壁の弛緩をもたらすため，外傷性胆嚢損傷の誘因の一つとなりうる。本症例でも過量飲酒が一因となった可能性が示唆された。治療としては，原則的には可及的早期の外科的加療が望ましいと考えられる。