アカイエカ群の諸形質に関する遺伝学的検討 : (VI) アカイエカ幼虫の数種殺虫剤に対する交叉抵抗性について

Abstract

1.淘汰あるいは卵塊別飼育による分離によつて得たmalathion抵抗性と感受性コロニー(Culex pipiens fatigans), diazinon抵抗性と感受性コロニー(Culex pipiens molestus)およびfenitrothion抵抗性と感受性コロニー(Culex pipiens molestus)を用い, 有機燐剤同士および有機燐剤と塩素剤間の交叉抵抗性を求めた.2.交叉抵抗性の程度をあらわすのに, 交叉抵抗性度(ratio of cross resistance, RCR)という概念を設定した.ある種の昆虫の多くのポピュレーションのうち, A, B両薬剤の最大のLD_<-50>値をそれぞれA max., B max.最小のLD_<-50>値をA min., B min.とする.すなわち, A max., B max.は抵抗性の純系のLD_<-50>, A min., B max.は感受性系のLD_<-50>である.今, A薬剤にmaximum resistantのコロニーを用いた場合のB薬剤のLD_<-50>をB_A-max.とすると, BのAに対する交叉抵抗性度(RCR)は, 次の式によつて示される.[numerical formula] 3.以上の交叉抵抗性度によつて, diazinon, fenitrothion, malathionの交叉抵抗性を求めたところ, diazinonとfenitrothionは完全に交叉していた.malathionとdiazinonおよびmalathionとfenitrothion間の交叉抵抗性度は16〜21であり, その程度は低い.fenthion, dichlorvosと上記の3薬剤との交叉抵抗性の程度は更に低いものと推定された.4.malathion, diazinon, fenitrothionと塩素剤の交叉抵抗性については, DDTとは全く交叉しておらず, またdiazinon, fenitrothionでは, dieldrin, lindaneとも全く交叉していなかつた.ただ, dieldrin, lindaneにほぼ感受性のコロニーから淘汰と分離によつてmalathion抵抗性および感受性のコロニーを得た場合, 両コロニーともdieldrinに対してかなり抵抗性を増大することが認められた.