Abstract

本研究の目的は,複数の証拠として,適切かつ十分な証拠を利用するアーギュメント構成能力を育成する上で,McNeill and Krajcik(2011)の教授方略を援用してデザインした授業の有効性について,小学校第5学年の単元「電流がつくる磁力」を事例として明らかにすることである。山本・稲垣ら(2013)は,同学年の単元「物の溶け方」を事例として,教授方略を援用した授業をデザインし,その有効性を明らかにしている。本研究は,異なる単元においても教授方略を援用した授業が適切かつ十分な証拠を利用するアーギュメント構成能力を育成する上で有効なのかを新たに検証するものである。アーギュメント構成能力を評価するために,第5学年の2クラスの児童計65名を対象に,既習内容に関するアーギュメント課題を単元前後に実施した。課題の回答を分析した結果,児童は,主張に関連する科学的な証拠のみを利用する適切性の点において,アーギュメント構成能力が向上したことが明らかになった。また,量的,質的なものを含めた多様な証拠を利用する十分性の点においては,部分的ではあるが,アーギュメント構成能力が向上したことが明らかになった。しかしながら,同時に,証拠の十分性の一部についてはさほど向上しなかったことも見出された。その理由を探るために,証拠の選択率を補足的に分析したところ,実験結果の意味を類推しなければならない「間接的な証拠」を選択することが必ずしもできていないことがわかった。以上の結果を総合的に考察することで,McNeill and Krajcik(2011)の教授方略を援用してデザインした授業は,単元「電流がつくる磁力」においても,適切かつ十分な証拠を利用するアーギュメント構成能力を育成する上で有効であると結論づけることができた。併せて,教授方略を援用してデザインした授業は,「単元内におけるアーギュメントの複数回指導」と「間接的な証拠利用の促進」という点で改善の余地があると考えられる。

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