Abstract

目的.石綿による肺癌の頻度と臨床像を明らかにする.対象と方法.単一施設における原発性肺癌の連続479手術例(男性327例,女性152例)を対象とした.肺癌発生リスクを2倍以上に高める石綿曝露を示す医学的所見を認める肺癌を,石綿による肺癌とみなして石綿関連肺癌と定義し,その頻度,石綿曝露歴,臨床像を検討した.結果.われわれが設定した基準により,45例(9.4%)を石綿関連肺癌と判定した.全例男性で,男性例の13.8%を占めていた.全例に職業性曝露歴があり,曝露開始から手術までの期間は平均47.8年であった.石綿関連肺癌群の年齢は平均71.8歳で,対照群(石綿曝露がない男性肺癌例)のそれ(66.9歳)との間に有意差があった.喫煙指数に有意差はなかったが,両群ともにほとんどの患者が重喫煙者であった.肺癌の発生部位および組織型別頻度では両群間に有意差はなかった.結論.石綿による肺癌の頻度は低くない.その代表的な患者像は,職業性曝露歴があり,曝露開始後30年以上経過した重喫煙歴のある男性であった.医師は,肺癌の診療に当っては,石綿曝露歴や石綿曝露を示す医学的所見の有無に留意すべきである.

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