Abstract

中年期は人生の後半へと向かい,老いや自己の有限性の自覚など負の要因に直面する時期であるとされ,臨床的な問題もこのような状況の変化によって過去から未来への連続した自己の展望が持てないことによるものが多い。本研究では中年期を対象に,どのように自己の過去・現在・未来を展望し,現在の自己を意味づけているのかということに注目し,精神的健康との関連から,中年期の時間的展望の様相を,量的な側面と質的な側面からとらえた。その結果,40歳代では未来志向であり,50歳代に現在志向への転換が見られることが示された。精神的健康との関連では,40歳代では現在の充実感,50歳代では過去の受容と現在の充実感,60歳代では,現在の充実感と,未来への希望が,精神的健康と関連することが示唆された。それらの様相を,半構造化面接による語りから質的に分析した結果,中年期の身体的心理的変化の気づきや受容に伴って,40歳代では過去を土台としてとらえ,50歳代では未来を志向する中で過去の出来事に対する必然感が生じ,それに続く現在として現在の出来事に深くコミットし,60歳代では,作り上げたものとしての自己を受容し,それを表現する場としての未来を志向していることが示された。

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