日中環境問題の産業連関分析(4)

Abstract

近年の中国の高度成長においては，鉄鋼，化学など基礎素材の生産拡大におわれる一方で，環境保全投資は不十分な状況であり，公害・環境破壊の進展が危惧されている。他方，日本などの先進国では，公害防止投資がかつて大規模に行われ，同じ財を生産する場合でも環境負荷はかなり低い。そこで，本論文では，国際市場メカニズムに沿って貿易自由化が進展し，中国の比較優位財(主に軽工業)の輸出が伸び，比較劣位財(主に基礎素材)の輸入が削減したと仮定しシミュレーションを行い，中国で生産される基礎素材製品の環境負荷が高いため，それが先進国で生産されて輸入されることにより，地球全体に対する環境負荷はかなりの程度下がることが明らかにされる。