Abstract

チカイエカの濾胞発育, 産卵, 交配などの生態的特徴を, 飼育実験によつて検討した結果, 次のことがらがあきらかになつた.濾胞発育の段階をDetinova (1962)にしたがつて5段階にわけ, 25℃, 20℃および平均10℃の室温でその進み方を観察した.正常な濾胞発育を経た交配雌はそれぞれの条件下で羽化後3日ないし5日, 5日ないし7日, および14日ないし20日あるいはそれ以降に産卵段階に達した.しかしその時期に至つてもまだStage III以前の低い段階にある濾胞をもつた個体が, 未交配の場合にしばしば観察された.雌成虫に5%の砂糖水を与えると生存日数を著るしく延長させることができ, 羽化後20日間の生存率は67.5%であつたに対し, 水のみを与えた群では同期間6.3%の生存率であつた.特に後者の場合産卵後3日間に95.6%が死亡した.この飼料を与えることによる産卵の遅れはみとめられなかつた. Stage Vに達した濾胞が産卵されるために, 受精嚢内の精子存在が関係をもつことが明らかになつた.未交配雌は産卵開始が1日あるいはそれ以上不規則に遅れ, 離散型の卵塊を産み, 産み残しの卵数が多い傾向がみとめられた.チカイエカ雄の交配活動はアカイエカ雄のそれよりも羽化後早期にあらわれ, 羽化後1日を経過した雄1個体は, 雌10個体と(20cm)^3の飼育箱内に3日間放たれると, 25℃で最大6個体の雌と交配可能であつた.同条件ではアカイエカ雄の場合, 10回のくりかえし実験中わずか1例において, 交配数1の結果を得た.また羽化後3日間では, アカイエカ雄に対する雌の交配受容性は, 同型のアカイエカ雌よりもチカイエカ雌の方が高いことが明らかになつた.試験管内に雌雄を一対としておくとき, 25℃, 20℃および平均10℃の各温度条件下では, 20℃がもつとも高率の交配率を示し, 接触6日間で最高100%, 平均10℃では14日間で最高85%, 25℃では5日間で71%であつた. 25℃で交配雄は25日間の観察期間中91%が死亡するが, 未交配雄は32.7%が死亡した.試験管内で雌雄を十分接触させれば, 雌は高率の受精率をもつた卵を産み, かつ産卵後にも受精嚢内に精子を多量残すが, 雄1個体に雌10個体を飼育箱内3日間接触させたような場合では, 産卵後受精嚢内無精子で, 卵の受精率も低いような不十分交配の例が観察された.

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