Abstract
北海道芦別, 札幌市, 仙台市, 東京都, 名古屋市, 長崎県崎戸, 鹿児島市, から採集された広義のアカイエカを, 腹部腹板上暗色斑紋, 雌腹部背板上横帯, 翅脈柄室比, 雄外部生殖器の4つの形質について比較し, 併わせてすでに発表した奄美大島古仁屋産と新らしく川崎産のチカイエカを加えて検討した.1)腹斑は, 北方産では暗色斑の出現率が低く南方産では逆に高くなる.2)雌の背板横帯の形は北方産では直線が多く, 南方産では円弧状が多い.3)翅脈柄室比と, 雄外部生殖器の100D/V値はともに北方産で大きく, 南方産では小さい値をとる.4)各形質ともその変異は互に相重なり合いながらも, 北方より南方にゆくにしたがい漸次連続的に移行しており, 古典的な意味でのアカイエカとネツタイイエカとの二つの型を完全にわけることは出来ない.堀, 別宮らはこのことを, 主として雌蚊の翅脈柄室比と雄外部生殖器について検討した結果同様の結論を下しているが, 筆者の場合他の形質を併わせ検討してもほぼ同じ結論を得た.5)川崎産のチカイエカではとりあつかつた形質中, 特に雄外部生殖器において他の群といちじるしく異なつており, 他の形質では顕著な差を示さなかつた.この研究に御指導をいただいた東大伝研寄生虫部佐々学教授ならびに材料入手に御協力をいただいた三浦昭子博士に深謝する.
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