Abstract

要旨 救急医療の現場で腹腔内遊離ガスを認めた際には消化管穿孔を念頭に対応するが,まれに外科的処置を要さないnonsurgical pneumoperitoneumと呼ばれる病態に遭遇する。われわれは腸管気腫を伴わない腹腔内遊離ガスを呈した患者を保存的に治療し,原因として強皮症の診断に至った1例を経験したので報告する。症例は70歳代の女性。全身の浮腫と腹部膨満を主訴に救急搬送された。CTでは上腹部にわずかな腹腔内遊離ガスを認め,腹水と麻痺性イレウスを伴っていたが,呼吸循環は安定していた。腹部所見に乏しいことから上部消化管穿孔疑いとして保存的加療を行った。しかし上部消化管内視鏡やCTの再検でも穿孔部位は特定できなかった。その後,症状の経過,血清学的マーカーや皮膚所見から強皮症の診断に至った。経過は良好で浮腫は消失し退院した。強皮症の患者では,腸管の硬化や繊維化により麻痺性イレウスや腸管気腫症を生じ,ときに腹腔内遊離ガスを来す。本例は腸管気腫症を認めないにも関わらず腹腔内遊離ガスを呈している点が特徴的であった。nonsurgical pneumoperitoneumの症例においては,背景疾患として強皮症を鑑別にあげることは重要である。また,強皮症に特徴的な腸管気腫症を認めずに腹腔内遊離ガスのみを認める非典型例が存在することにも留意する必要がある。

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