Abstract
Fallot四徴症における上行大動脈の拡大は,大動脈弁閉鎖不全や大動脈瘤,ひいては大動脈解離の原因となり得るため,特に成人期の重要な合併症の一つである.大動脈の脆弱性をもたらし得る大動脈中膜組織変性と大動脈への容量負荷が本症における大動脈拡大の主因であると推察されてきたが,その詳細は十分解明されていない.われわれは大動脈中膜変性が血管弾性低下(大動脈壁硬度上昇)としてとらえることができることに着目し,この血管壁硬度が大動脈径拡大と密接に関係していることから,大動脈組織変化の大動脈拡大機序における重要性を明らかにした.さらに,大動脈壁硬度上昇は大動脈拡大の予後予測因子としても有用である可能性を見出した.さらに乳児期の修復術前Fallot四徴症においては,大動脈への容量負荷も大動脈径拡大に強く影響していることを証明した.本稿では,そのほか,遺伝的素因やMarfan症候群で大動脈拡大の中心的機序を担うTGF-βの関連に関しても言及し,Fallot四徴症患者における大動脈拡大機序の本態にせまることを試みた.このような機序がより解明されることで,今後,適切な治療介入が行えることが可能になり,遠隔期予後の改善に寄与することが期待される.
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