Abstract
「保険法」が成立しその施行を待つばかりであるところ,具体的な規定としては盛り込まれなかった信義誠実の原則(信義則)について,保険契約における信義則のこれまでの議論と若干の判決例を整理することにより,「保険法」に信義則を明確にする規定は必要であったかどうかを探りたい。確かに,民法において明文規定を置く信義則(民法1条2項)を民法の特別法としての地位が与えられる「保険法」にあえて規定する必要性は認められないかもしれない。しかしながら,「保険契約者の保護」が「保険法」制定のひとつの趣旨であるならば,やはり,保険契約の契約としての特殊性,すなわち保険契約の(最大)善意契約性を確認し,保険者側にこそ強く信義則が要請されるものであり,保険契約における信義則の具体的内容と効果を示すことができないとしても,「保険法」に明文化する意味があったのではないかと考える。
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