Abstract

日本で内閣総理大臣を務めた安倍晋三が2022年7月9日に銃撃され死亡した。これに対して世界中から多くの意見が発された。その中でも台湾(中華民国)は特に強い哀悼を示している。しかし、その哀悼も、台湾の新聞報道などを見てみると、純粋な哀悼というよりかは台湾の安全保障にとって大きな損失があるためという側面が大きいように見える。本稿はこの点を素材にして、安倍晋三銃撃および死亡事件から日台関係を見直すものである。 そして、台湾での安倍晋三の評価は、かつて「台湾有事は日本有事」と発言したことに対して高い評価が集まっている。これは、2015年に憲法違反だと指摘を受けながらも、安倍晋三主導で制定された安保法の集団的自衛権行使の要件について述べているものと思われる。ここから台湾の報道や台湾の政治家は、台湾有事が発生した場合には日本が台湾防衛に協力する道筋を作ったために安倍晋三を高く評価しているのではないかと本稿は指摘する。 しかし、安保法はあくまで日本の存立が危機に陥ったり、日本に重要な影響が生じない限り他国の武力行使には介入できないようになっている。そして、あくまで安保法ではこのような要件を課しており、さらに違憲無効と判断される可能性も高く残されている。そして、台湾では安保法制定時には「日本の立憲主義は崩壊した」などと批判的な報道が多くあったにもかかわらず、安倍晋三銃撃および死亡事件発生時には、安倍晋三は批判に屈しなかったと好意的に報道していることも指摘する。 本稿の結論としては、台湾は日本国憲法上できない可能性のある集団的自衛権による日本の台湾防衛に対する協力を安倍晋三の「台湾有事は日本有事」との言葉から期待しており、日台関係は互いの「勘違い」の上に成り立っている側面があると述べる。

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