Abstract

福岡県における肝硬変死亡率は人口10万当りおよそ20人で全国平均の約1.5倍である. 一方, 原発性肝癌はおよそ15人でこれも全国平均の約1.5倍である. アルコールの成人1人当り年間消費量は7.5-8.0ℓで全国的に第17-19位であり, 最高(10 ℓ)と最低(5 ℓ)の中間よりやや上位という所である. またHBs抗原については福岡県血液センターでの献血希望者からみたところ, その陽性率は2.6-3.1%で, これも全国平均1.9%のおよそ1.5倍である. 福岡県下の飲料水の原水となっている遠賀川流域ならびに筑後川流域の水質には総鉄量が多いことを除いては. とくに異常はみられなかった. 福岡県で肝硬変・肝癌死亡率がとくに高いのは筑豊の数か町村でありこの一帯は被生活保護率もとくに高い. 以上, 福岡県に肝硬変・肝癌患者が多くその死亡率も高いのは, 多因子に由来するものと思われ, 単一の因子でこれを説明することは困難である. 今後の問題としては福岡県下住民の免疫遺伝学的考察も必要であると考える.

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