Abstract
トマト固定品種'ファースト'の乾燥種子に総線量100, 200および400Gyのガンマー線(60Co)を照射して突然変異の誘発を試みた.照射時間はいずれも5時間とした.1. 照射種子(M1)はいずれも発芽するが, 線量が高くなるほど実生の生育が劣り400Gy区では子葉展開後に枯死した.100Gy区では照射種子の約80%, 200Gy区では38%の株でM2種子が採種できた.M1株の花粉稔性は照射区で劣り, 100Gy区より200Gy区で顕著であったが, 全不稔の花は存在しなかった.また, 花粉稔性と種子数の間には相関は見られなかった.2. M2世代において, 100Gy区の188系統では3種類の突然変異が出現した.つまり, 葉幅の狭い系統, 10%以下の可稔花粉系統, オリジナルと同じ雄ずい型の雄性不稔系統である.200Gy区の88系統では9種類の突然変異が出現した.つまり, 葉緑素突然変異としてアルビノ, ビリデイス, キサンタおよび部分欠損の4系統, 10%以下の可稔花粉系統, オリジナルと同じ雄ずい型の雄性不稔系統, 葯が萎縮して褐色となり柱頭が突出する雄性不1稔系統, 葯は正常に発育するが, その葯の先端に柱頭が突出する雄性不稔系統および発芽不能系統であった.以上の結果より, トマト種子から突然変異を誘発する場合のガンマー線の好適照射線量は200Gy付近にあると考えられた.3. 葉緑素部分欠損形質は, ヘテロ自家受粉種子における分離比が正常 : 欠損=3 : 1に適合したことから, 1劣性遺伝子によって支配されているものと推察された.葉緑素欠損葉において生育中に線状や点状に緑色を発現する個体があり, その発現部分が拡大すると個体の生存は可能となった.
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