Abstract
我々は,イヌの実験的骨欠損部に低出力超音波パルス(LIPUS)を照射すると,歯周組織の治癒が促進されることを報告した。しかし,その詳細なメカニズムは明らかでないため,今回は,ヒト歯槽骨骨膜由来細胞(HABPCs)の細胞凝集塊(スフェロイド)を作製して LIPUS を照射し,スフェロイド内の細胞形態および骨基質タンパク発現に与える LIPUS の影響を経時的に検索した。1 日,3,7,および 14 日間,LIPUS を照射したスフェロイドに対し,トルイジンブルーを用いた組織学的検索と,抗オステオポンチン(OP),抗オステオカルシン(OC) を用いた免疫組織化学的検索を行ったところ,1 日目から細胞の走行などにより区別された層構造がスフェロイドに認められたが,照射近位部,照射遠位部,コントロールの順で経時的に層構造は不明瞭になっていった。また,全てのスフェロイドに深層から中層,表層の順で OP と OC 免疫陽性反応が認められた。経時的には,照射近位部,照射遠位部,コントロールの順に,OP,OC 免疫陽性反応が認められ,照射近位部では 1 日目よりスフェロイドの表層から深層へ向けて索状構造が観察された。これらの結果から,LIPUS 照射の影響が大きい照射近位部で早期に OP,OC の発現と索状構造が認められたため,LIPUS 照射により,スフェロイド内の HABPCs の細胞分化の促進と細胞の方向性の変化が起こることが示唆された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)55(4):312-325,2013
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