Abstract

要旨 解離性胸部大動脈瘤は胸痛,背部痛などの疼痛症状のほか,嗄声や喘鳴を来すことがある。今回,上行・下行胸部大動脈瘤に挟まれた気管が解離性大動脈瘤の拡大により2方向より圧排され,切迫心停止に至るような重篤な気道狭窄,呼吸不全を呈した症例を経験した。突然の呼吸困難感において解離性胸部大動脈瘤も鑑別に挙げることは重要と考え報告する。症例は80歳代の女性で,来院2日前から息切れが生じ,前日に喘鳴が出現した。来院1時間前に突然呼吸困難感が出現し,救急要請となった。来院後,SpO2 50%,徐呼吸,徐脈となったため,気管挿管し,胸腹部造影CT検査によって偽腔開存型の上行大動脈の解離性大動脈瘤,下行大動脈の嚢状動脈瘤による気管の圧排と診断し,心臓血管外科にて,緊急で全弓部大動脈人工血管置換術を施行した。術後翌日のCT検査で気管支径の改善を認め,酸素化は徐々に改善し,術後34日で転院となった。術後半年のCT検査で気管支径はさらに改善を認めた。既報を参照すると,本症例のように急激な呼吸状態悪化を来した症例の共通点として,「両側からの圧排」,「大動脈瘤切迫破裂」が挙げられ,上行大動脈,下行大動脈の両者に瘤を有する患者や解離性大動脈瘤を有する患者では症状出現前の早期の手術が必要と考えられた。

Full Text
Paper version not known

Talk to us

Join us for a 30 min session where you can share your feedback and ask us any queries you have

Schedule a call