気管・気管支軟化症に伴う致死的気道虚脱に対する気道管理手法の経験(A case of airway management for fatal airway collapse associated with tracheobronchomalacia)

Abstract

要旨 気管・気管支軟化症は気管壁の脆弱性のため，呼気時に高度の気道虚脱を来す疾患である。咳嗽，喘鳴，呼吸苦などの呼吸症状を呈し，重篤な場合には気道の完全虚脱により死に至った症例もある。本疾患は臨床症状と気管・気管支の脆弱性の証明により診断を行うが，近年内視鏡検査による気道脆弱性の定量的な評価を行う気道内圧断面積試験が報告されている。今回我々は，肺炎を契機に呼吸不全を呈し，治療中dying spellを来した成人脳性麻痺症例を経験した。本症例は既往歴に気管・気管支軟化症を持ち，当院入院後の内視鏡検査では気管，左主気管支で軟化所見を認め，気道内圧断面積試験を行った結果，予測気道閉塞内圧が気管では −44.9cmH2O，左主気管支では −23.1cmH2Oと気道脆弱性が証明された。人工呼吸器離脱のために気管切開を先行し，気管の軟化部より末梢側までカバーするよう気管切開チューブを適切な位置に留置することで気道閉塞を回避することができた。