Abstract

阿武隈山地花崗岩類は阿武隈山地を北北西‐南南東に走る畑川破砕帯によって境される.畑川破砕帯は先新第三系地質体を境とする構造線とされ以東に露出する古い花崗岩類と以西に露出する新しい同質岩は明確に区別されている.また畑川破砕帯東側の双葉破砕帯及び西側の棚倉破砕帯を基準として大まかに 3 つに分 け,畑川破砕帯と棚倉破砕帯間の南部(北緯 37 度 10 分以南)には変成岩が共存することから,最終的には 4 地域に分けて物理定数の結果を検討した. 結果は以下のようである. 阿武隈山地畑川破砕帯以東についてその密度をみるとその変化範囲は 2.62 ~ 2.82(g /cm3 =× 103 kg/m3),平均 2.69(g /cm3)で,それに対し以西は同 2.57 ~ 3.16 (g /cm3),2.70(g /cm3)そして南部は同 2.61 ~ 2.97(g /cm3),2.74(g /cm3)である.これは畑川破砕帯以西に密度の大きい斑れい岩類が多く含まれるが,南部地域は大きな密度の試料の割合が多いことを意味している.孔隙率は三地域いずれも大差なく平均値,最頻値とも 0.7 %台であり,南部地域は 0.6 %台である. 磁化率についてみると,阿武隈山地東部双葉破砕帯以東,太平洋までの間に見られる花崗岩類は,カリ長石の少ないいわゆるトーナル岩であって,密度の大きさの割には比較的磁化率の高い岩石で,双葉破砕帯‐畑川破砕帯間に見られる岩石とは異なる岩石として考えるのが妥当と思われる.双葉破砕帯と畑川破砕帯間に露出する岩石は地域により,低い磁化率を示す岩石と,中程度の磁化率を示す岩石に分かれ,高い磁化率を示す岩石は見当たらない.次に畑川破砕帯以西も低い磁化率を示す岩石と中程度の磁化率を示す岩石とにわかれる.この地域にみられる斑れい岩類は原則として高い磁化率を示す.南部地域も畑川破砕帯以西に類似するが中程度の磁化率を示すものの割合は畑川破砕帯以西同様多くない.磁化率の強度から見た双葉破砕帯‐畑川破砕帯間の岩石は南部北上山地と比較して平均値で 0.25 程度しかなく,磁化率から見た畑川破砕帯は,地質学的に考えられている境界のような意味を持っていない. Qn 比について阿武隈山地全域は 0.4 程度以下であり,これまでに公表されている他地域の花崗岩類と大差は無い.

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