Abstract

慶應義塾大学メディアセンターが2010年度から2012年度に行った電子学術書利用実験プロジェクトの最終報告として,実験の成果や意義を報告した。同実験は学術出版社や協力企業と共同で電子化した学術書(既刊書・和書)を学内に提供する実証実験で,大学図書館に対して,学術書を中心とする電子書籍提供モデルの可能性について検討を行うものであった。本稿は利用実験に焦点を当て,アンケート調査と聞き取り調査をもとに,「学生は電子書籍をどのように感じ,何を期待しているか?」を中心に論じた。利用者は検索,表示,目次の機能を重視し,「調べる読書」の電子化への要望が強い。また学習に関する電子化された情報を管理するネット上の「場」を望んでいることがわかった。得られた結果をもとに,教育インフラとしての電子書籍や新しい教科書の可能性を探った。研究や学習・教育の変化により,日本の大学図書館では学術書籍の大量電子化作業が不可欠である。慶應義塾大学メディアセンターでは他機関図書館との共同実験を計画し,電子書籍の汎用的な利用モデルの実現を目指している。

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