Abstract

子実タンパク質含有率の向上のために開花期追肥が重要であるパン用コムギ「せときらら」について,穂肥と同時に被覆尿素肥料を追肥することで開花期追肥を省略できるかどうかを検討した.試験は山口県農林総合技術センター内の水田転換畑で 2013/2014 年と 2014/2015 年の 2 か年について行った.硫安を用いて穂肥と開花期追肥を行った区 (分施区) と穂肥と同時に被覆尿素を施用して開花期追肥を省略した区 (被覆尿素区) を比較した.その結果,被覆尿素区では分施区と比べて収量が増加して子実タンパク質含有率は低下した.収量と子実タンパク質含有率には負の相関関係が認められた.被覆尿素区で子実タンパク質含有率が低下したのは,被覆尿素肥料を施用してから開花期までに施用窒素量の 19~60%が溶出することで「せときらら」の穂数が増加して収量が高まることに加えて,子実タンパク質含有率向上に有効とされる開花期の溶出量が少ないためであると考えられた.また,シグモイド型被覆尿素肥料を窒素成分で分施の 2 倍施用すると,子実タンパク質含有率は分施区にはおよばなかったが被覆尿素を窒素成分で分施と同量与えた場合よりも高くなった.以上のことから,施用窒素量が同水準の場合,被覆尿素肥料の穂肥同時施用は硫安表面施用による分施と比べて子実タンパク質含有率が低くなること,被覆尿素肥料の施用窒素量を増やすことで子実タンパク質含有率を向上させられる可能性があることが明らかとなった.

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