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Mixing processes and hydraulic environments in coastal regions: Internal tides and mixing phenomena

沿岸域における物質輸送過程は陸域と外洋間の物質収支の把握に重要であり,物質輸送過程の解明には混合現象の調査が必要不可欠である。本稿では,筆者がこれまでに行なってきた沿岸域における内部潮汐により発生する混合現象と関連する物質輸送に関する観測的研究や,数値計算を用いた内部潮汐のモデル化について紹介する。沿岸海域における混合現象はスケールが小さく直接詳細な構造を計測することが難しいことを着眼点に曳航式の観測装置を開発し,河口周辺における河川プリュームの混合状態や非線形性内部潮汐が斜面上で砕波する様子を観測することに成功した。大槌湾で観測した内部潮汐の砕波は,強い乱流混合による底質の巻き上げと中層高濁度層の形成を伴っていた。緩斜面においては,非線形性内部波の引き波と次の波が斜面上で衝突することで強い混合を発生させることを海洋の直接観測から始めて明らかにした。さらに内部潮汐の砕波を再現するモデルを開発し,内部潮汐砕波の詳細な構造の評価を行なった。また大スケールの海洋モデルを用いて,伊豆諸島周辺において日周期の内部潮汐が島々にトラップされ共振することで強化されることや,黒潮と内部潮汐の相互作用により黒潮上流方向への強い内部波エネルギーの伝播が起こることを発見した。本稿では,筆者が近年海洋観測技術を応用した湖沼における混合状態の研究事例も紹介する。

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Relevant
Horizontal distribution of the benthic front formed at the boundary between Japan Basin Bottom Water and Yamato Basin Bottom Water in the Japan Sea and modification processes due to mixing of both Bottom Waters

日本海の底層前線は明瞭な水温差を有し,低温かつ高酸素の日本海盆底層水(Japan Basin Bottom Water:JBBW)と高温かつ低酸素の大和海盆底層水(Yamato Basin Bottom Water:YBBW)の境界域に形成されている。その一方で,YBBW の起源はJBBW であることも知られている。そこで,2015 年春季と2016 年夏季,底層前線付近において船舶観測を実施し,これら底層水の輸送と変質過程の詳細を調べた。両底層水の水塊区分は溶存酸素ーポテンシャル水温ダイアグラムを用いて判断され,日本海盆側から大和海盆内へ流入したJBBW の先端付近では,両底層水間の顕著な混合水が形成されていることがわかった。それゆえ,この混合水が大和海盆内でほぼ閉じた水平循環流によって反時計回りに輸送されながら,地殻熱流量で加熱,酸素が消費され,高温かつ低酸素で鉛直混合されたYBBW へ変質し,そして再びJBBW と接して底層前線を形成することが推測される。底層前線のYBBW側混合水域における詳細断面観測(測点間隔が約1 マイル)では,過渡的な水塊混合状態を示唆する波長約10 km の波状構造を捉えることができた。最も興味深い特徴は,水温と溶存酸素の鉛直断面分布が一致していない点である。すなわち,水温場が示す波状構造は海底に捕捉されているようにみえるものの,その底層低温部の片側半分(約5 km)に高酸素の混合水(元々はJBBW 起源),残りの半分に低酸素のYBBW が位置していた。このように,両底層水の混合による変質過程には,波長10 km程度の海底捕捉擾乱(内部波もしくは水平渦流)の関与が示唆される。

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An attempt to quantify favorable environmental factors of epiphytic substrate for Pacific oyster <i>Crassostrea gigas</i>

付着生物にとっての着定基質構造の評価を行う一環として,産業重要種であるマガキ Crassostrea gigas 幼生採苗器(カキ幼生コレクター)の表面粗さの定量化を,光沢度を用いて試みた。その結果,カキ幼生コレクターの表面では光沢度が3.6 以下で幼生は24 個体/cm2 以上,裏面中心部では光沢度が8.6 以上で幼生は10 個体/cm2 以下となり,カキ幼生コレクターの部位毎の光沢度及びマガキ幼生の付着数には有意な相関が認められた。次に,紙やすりを用いて光沢度の値を凹凸の粗さに対応させることを試みた。その結果,紙やすりの粒径と光沢度は,決定係数が低いものの有意な相関が認められた。また,0.25 mm以上の凹凸では光沢度が測定出来ないことも明らかとなった。表面粗さの定量化については今後もさらなる詳細且つ多様な解析が必要であるが,本研究結果からは,カキ稚貝の密度が最も高くなる基質表面の粗さとそれを示す光沢度を解明できる可能性が示された。これらの成果を応用することで,将来的にカキ幼生の採苗密度の向上が期待できる

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