157例の肝疾患につき, 主として穿刺吸引細胞診の成績を検討した. その内訳は, 肝細胞癌35例, 肝芽腫1例, 胆管癌6例, 転移性肝癌47例, 悪性リンパ腫3例, 肝硬変症19例, その他28例であった. 肝細胞癌35例のうち, 細胞診で30例を肝細胞癌, 4例を疑陽性, 1例を陰性とした. 胆管癌6例のうち, 胆管癌と診断したのは1例, 他は肝細胞癌や転移癌とし, 1例は陰性であった. 転移性肝癌47例のうち, 42例を陽性と診断したが, 原発巣を決定するのは困難であった. 肝硬変症19例のうち, 18例を陰性としたが, 誤陽性1例があった. 悪性腫瘍の診断率は87%であった.肝細胞癌の細胞像の特徴は,(1) 輪郭が不鮮明な広い泡沫の胞体, (2) 核の大小不同, (3) 巨大核, (4) 胞体内胆汁色素, (5) 好酸性胞体内封入体等であり, N/C比は小さかった. 胆管癌の細胞像は, 一般の腺癌細胞と異なるところはなかった. 肝硬変症でみられる再生異型細胞は, 大型で核や核小体も増大し, 肝細胞癌の細胞との鑑別が重要と思えた. 本邦の肝細胞癌が, よく肝硬変に伴って発生する事実や, 原発性肝癌に対する外科手術の進歩から, 手技が簡単で, 危険性の少ない肝穿刺吸引細胞診の価値は大きいといえよう