筋上皮細胞の異常増殖を伴っていた乳腺導管内乳頭腫の1例について, 吸引細胞診所見を中心に, 文献より得た筋上皮腫例 (myoepithelioma) との考察を加え報告した.症例は81歳, 女性。左乳輪下部に2.5×2.0cmの腫瘤が認められ, 諸検査の結果, 癌が疑われたため腫瘤摘出術が施行された. 組織学的には広い立方状~ 円柱状細胞質を有する導管上皮の乳頭状~ 管状増生像と, その直下に密に増殖した小型紡錐形細胞を認めた. 後者の細胞はABC法によってS-100protein, actin, keratin抗体に陽性反応を示し, 筋上皮細胞と考えられた. 吸引細胞診で筋上皮細胞と思われた細胞は, 紡錐形の細胞から構成される密な結合を示す大型で不規則な帯状~ 渦巻状配列を示して出現していた. 楕円形の核内には細顆粒状クロマチンが均等に分布し, 核小体は目立たなかった. その他乳頭状増生を疑わせた細胞, アポクリン化生を伴う導管上皮細胞が出現していた. 筋上皮細胞増生像の細胞学的推定は可能と思われるが, 細胞診的な検討の集積が望まれる.
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