- Research Article
1
- 10.1626/jcs.94.42
- Jan 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- Kazuyuki Tanno
植物の出芽は乾燥や土壌クラストによって阻害され,これらの出芽阻害要因は播種前後の気象で変化し,出芽率や適正な播種深は播種前後の降水条件に大きく影響を受けることが知られている.対応策として多めに播種し手作業で間引く方法は,土地利用型作物では労力的に困難である.特に,種子の小さい作物は出芽阻害を受けやすく,気象条件に応じた適正な播種深設定が重要となるが,播種後の気象は予測困難である.そこで,栽培予定条間に対し半分の条間で播種深の浅い条 (浅区) と深い条 (深区) を交互に設定し,出芽の劣った条を中耕作業で間引く「二深法播種」 を考案した.本研究では,ゴマにおいて様々な気象条件のもとで二深法播種を圃場で38回実施して出芽率を調査した.その結果,気象条件によって浅区の出芽率のみが高い場合,深区のみが高い場合,ほとんど差がない場合の3パターンに分かれた.各パターン別の出芽率の事後分布と天候パターンの発生割合をもとに出芽率のシミュレーションを実施した.その結果,目標出芽率45~75%を達成する確率は,浅区のみでは59%,深区のみでは54%であったのに対し,二深法播種区では81%となり,二深法播種の実用性が示された.
- Research Article
- 10.1626/jcs.94.71
- Jan 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- Yohei Kawasaki + 5 more
中山間地域の水田転換畑における多収栽培技術の確立は国内の農地の生産性向上において重要である.一方で,ダイズやムギ類では排水不良による湿害が問題となっている.これまでに中山間地域において,圃場造成時の切土箇所と盛土箇所で土壌水分量の傾向が異なっていることが示唆されており,平坦地よりも切土盛土による元地形からの変化量が相対的に大きい中山間地域においては,圃場造成履歴に着目することで多収に有効な排水対策を講じられる可能性がある.本研究は中山間地域における本暗渠未施工の水田転換畑を対象に,圃場内の排水不良を補助暗渠の利用により改善する技術の開発を目的として行った.試験は2020年から2022年に広島県東広島市の中山間地域において水田輪作を実施している農家圃場において行った.過去の航空写真を用いて当該圃場の切土盛土の分布地図を作成し,もみ殻暗渠施工機と弾丸暗渠施工機を使用して切土箇所と盛土箇所間の水の流れを改善する目的で,切土箇所と盛土箇所を接続する方向に補助暗渠の施工を行った.施工時に測量したところ,盛土箇所において地表面の沈降が見られ,盛土箇所に水が集まりやすいことが示唆された.2022年に,盛土箇所に深さ35 cmの排水口を設けた上で,補助暗渠を排水口から放射状に施工したところ,ダイズのm2当たり株数が向上し,全刈収量において有意な増収効果がみられた.これらの結果は,中山間地域においては,圃場の造成履歴に基づき排水口を検証し,盛土への集水を利用することで,排水対策の効果が高まることを示唆している.
- Research Article
- 10.1626/jcs.94.86
- Jan 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- 英樹 荒木 + 5 more
- Research Article
- 10.1626/jcs.94.66
- Jan 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- Makoto Kitou
本研究は,沖縄県でのソバ前作緑肥の台風による被害の程度を3種緑肥作物(クロタラリア属のジュンシアとスペクタビリスおよびセスバニア属のロストラータ)の強風による茎の折れと葉の萎凋および収穫時の生存個体数から比較した.また,ジュンシアとロストラータの生育量,窒素とリンの含有量など肥料成分の比較を行った.強風により茎の折れる個体数はジュンシアで有意に多く,潮風害による葉の萎凋個体はジュンシアとスペクタビリスでロストラータより有意に多かった.ロストラータではこれら被害はほとんど認められなかった.ジュンシアでは茎の折れた個体や葉の萎凋個体で再生する個体もあったが,スペクタビリスは再生せず,台風通過後の7月22日までにほぼ全ての個体が枯死した.生育量調査時の生存個体率はジュンシアで49%であったが,ロストラータでは87%であり,後者の強風や潮風害の抵抗性は非常に高いと考えられた.生育量,窒素含有量はジュンシアよりロストラータで高い傾向にあり,リン含有量はほぼ同程度であった.なお,ジュンシアでは個体数の減少により個体当たりの生育量が大きくなったことから茎のCN比がロストラータより顕著に大きくなり分解率の低下が懸念される結果であった.
- Research Article
- 10.1626/jcs.93.251
- Oct 5, 2024
- Japanese Journal of Crop Science
- Shizuka Mori + 1 more
近年,水稲・大豆などに甚大な被害を及ぼす潮風害が頻発していることが指摘されている.しかし,潮風害のような災害調査は,十分な準備と調査時間が得られず,実態を示す調査報告が多く,潮風害の圃場条件における再現法,発生機構,減収率の推定法,簡易に行える被害推定法,および潮風害の軽減対策などの研究事例は,障害型冷害や高温障害など他の気象災害に比べて極めて少ない.そこで,本総説では,水稲および大豆の潮風害の実態,発生機構,被害把握法,再現法,被害軽減技術等に関するこれまでの知見を紹介するとともに,今後の研究の展望についても解説する.
- Research Article
- 10.1626/jcs.93.312
- Oct 5, 2024
- Japanese Journal of Crop Science
- 加藤 優太 + 1 more
- Research Article
- 10.1626/jcs.93.268
- Oct 5, 2024
- Japanese Journal of Crop Science
- Akira Fukushima
寒冷地における水稲5品種の圃場試験,温暖地における水稲2品種×3施肥法×2移植時期の圃場試験を実施した.そして,籾を穂内位置別に強勢籾,中勢籾,弱勢籾に分類し,その籾殻サイズ,出穂20日後の粒重 (前期粒重),成熟期の粒重 (子実重),および,その差 (後期粒重) を測定した.籾殻サイズには品種による明確な差異,施肥法,年次・移植時期による僅かな差異が認められ,その多くの場合,籾殻サイズは強勢籾,中勢籾,弱勢籾の順に大きかった.子実の成長には品種,施肥法,年次・移植時期による明確な差異が認められ,いずれの場合も,前期粒重は強勢籾,中勢籾,弱勢籾の順に重く,後期粒重は,強勢籾より中勢籾,弱勢籾が重い傾向が認められた.強勢籾や中勢籾においては,籾殻サイズによって子実重が決まることが多いが,弱勢籾においては,子実が十分に成長しないことにより子実重が軽くなることもあると推察された.さらに,極大粒の「べこあおば」においては強勢籾の前期粒重が重い傾向が認められること,それとは大きく異なり,やや大粒の「にじのきらめき」においてはすべての籾の後期粒重が重いことが示された.
- Research Article
- 10.1626/jcs.93.259
- Oct 5, 2024
- Japanese Journal of Crop Science
- Takuma Kodate + 2 more
玄米外観品質を特徴づける「粒厚」が厚いなど特色のある米を求める消費者に対し,生産者や卸業者などの実需者は縦目ふるいで玄米粒厚選別した米を高品質米として販売してきた.東北(東部) 地域の主要な水稲品種である「ひとめぼれ」は,家庭用や業務用に多く用いられている.「ひとめぼれ」の玄米粒厚別の外観品質や米飯物性などの特徴を捉えることは,生産者と実需者にとって有益である.そこで,慣行の1.9 mmふるいで調製した「ひとめぼれ」玄米(以下,「慣行ひとめぼれ」) をさらに4段階の粒厚に選別し,粒厚と外観品質および米飯物性との関係に加え,登熟期の平均気温との関係を検討した.粒厚分布割合の低い1.9~2.0 mmの玄米は他の粒厚の玄米に比べて外観品質は低いが,「慣行ひとめぼれ」全体の外観品質への影響は小さい.また1.9~2.2 mmの玄米は粒厚が厚くなるにつれ,米飯粒全体の硬さは高くなるものの,全体のバランス度はいずれも「慣行ひとめぼれ」より高いことから,良食味と推察された.また,最も分布割合の高い2.1~2.2 mmおよび2.2 mm以上の玄米は登熟前期の高温により整粒割合が低下すること,粒厚が2.1~2.2 mmの玄米は登熟後期の高温によってアミロース含有率および米飯物性の粘りやバランス度が低下することが明らかになった.以上より,「ひとめぼれ」は慣行の1.9 mmふるい調製で高い整粒割合と良好な米飯物性が得られ良食味であるが,その中に含まれる割合が最も高い2.1~2.2 mmの玄米は登熟期の気温によって玄米外観品質および米飯物性が変動しやすく,「慣行ひとめぼれ」の食味に影響する.
- Research Article
- 10.1626/jcs.93.315
- Oct 5, 2024
- Japanese Journal of Crop Science
- 岩橋 優
- Research Article
1
- 10.1626/jcs.93.278
- Oct 5, 2024
- Japanese Journal of Crop Science
- Etsushi Kumagai + 2 more
近年,丹波黒大豆の主要産地において,丹波黒大豆の著しい収量減少が生じている.本研究では,この収量減少問題に注目し,気候変動による気温,日射量,土壌水分の変化が収量に及ぼす影響を多面的に分析した.丹波篠山市内の定点調査圃で収集されたヒストリカルデータを対象として,農研機構メッシュ農業気象データとFAO56モデルによる土壌水分の推定,トレンド解析,Least Absolute Shrinkage and Selection Operator (LASSO)による変数選択,構造方程式モデリング(SEM)分析を組み合わせ,収量形成と環境要素の複雑な因果関係を明らかにした.FAO56モデルは,実測された土壌物理性および作物暦と農研機構メッシュ農業気象データを用いれば,定点調査圃の土壌水分を推定可能であった.トレンド解析の結果,精子実重,整粒数,整粒率に有意な減少トレンドが見られた一方で,規格外粒率,変形粒率には有意な増加トレンドが確認された.また,10月下旬の日射量の増加トレンドが精子実重の減少や規格外粒率の増加のトレンドに大きく寄与することが示された.さらに,LASSOやSEM分析により,10月上旬の土壌水分は精子実重の変動に寄与し,収量安定化に重要な要素であることが明らかとなった.これは適切な灌水計画により収量増加が可能であることを示唆している.以上の結果から,丹波黒大豆の収量減少問題に対処するための栽培技術の改善と気候変動に適応可能な生産体系の構築への道筋が示された.本研究が提供する基礎情報は,今後の丹波黒大豆生産の持続可能性向上に貢献するものと期待される.