- Research Article
- 10.1626/jcs.94.396
- Oct 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- Akira Fukushima
水稲の乾田直播栽培における出芽の安定化に役立てるため,水稲,コムギ,ダイズ,およびトウモロコシの同時深播き試験を畑作物用の播種機を用いて実施した.播種深度は標準播区3 cm,深播区7 cmを目標とした.水稲は他の3作物と比較して,いずれの播種深度においても,出芽日数が長く,出芽率が低く,特に深播区の出芽率が極めて低かった.深播区において,コムギでは第1節間が3.9 cm伸長し,ダイズでは下胚軸が標準播区より2.9 cm長くなり,トウモロコシでは中茎が5.0 cm伸長したのに対して,水稲では中茎,第2節間の合計で2.3 cmしか伸長しなかった.このように他の3作物と比較して水稲においては,深播きによる茎の伸長の促進が少ないことが,深播きの出芽率が低いことと関連していると推察された.水稲の乾田直播栽培においては,深播きとならないことが推奨される.
- Research Article
- 10.1626/jcs.94.445
- Oct 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- 和彦 藤竿
- Research Article
- 10.1626/jcs.94.347
- Oct 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- Yuka Hanyu + 3 more
本研究では,ダイズ(品種:「おおすず」)の収量,収量構成要素,生育および乾物生産に及ぼす亜リン酸肥料の影響を調査し,亜リン酸肥料がダイズの収量に貢献するか否かを検討した.2021年には,散布濃度を決定するために,亜リン酸肥料を100倍希釈で散布する100倍区,500倍希釈で散布する500倍区を設けた.2022年および2023年の2年間に散布時期を検討するために,亜リン酸肥料を開花始期に処理する前半区,子実肥大始期に処理する後半区を設けた.2021年では,100倍区で粗子実重が増加し,2023年では,前半区(R1,開花始期)の精子実重および後半区(R5,子実肥大始期)粗子実重と精子実重が増加した.このことから,亜リン酸肥料を葉面散布することで,ダイズの収量が増加することが明らかになった.この増収には,莢数の増加が寄与していた一方で,生育期の地上部乾物重およびSPADは亜リン酸肥料の影響を受けなかった.以上のことから,亜リン酸肥料を生殖成長期(開花始期から子実肥大始期)にダイズに散布することで,ソース能よりもシンク能が向上し,莢数が増加することで収量の向上に繋がると考えられた.
- Research Article
- 10.1626/jcs.94.209
- Jul 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- Kosuke Haraguchi + 3 more
ハダカムギは,硝子質粒の発生が少ないことが望ましいが,その発生機作は不明瞭であり,有効な発生抑制技術も確立されていない.そこで,本研究では分げつおよび穂の子実着生位置ごとに硝子質粒の発生実態を明らかにし,その発生要因についても検討した.硝子質粒は,分げつ別では高位節分げつから,子実着生位置別では穂の下段から多く発生していることが明らかとなった.開花日は分げつ間にバラつきが見られ,高位節分げつほど遅くなった.また,開花日と硝子率との間に正の相関関係が認められ,開花日の遅い穂ほど硝子質粒の発生は多くなった.したがって,分げつ間における硝子率の変異は,開花日の違いに起因すると推察された.硝子率は,登熟期後期に低下し,硝子率低下と同タイミングで降雨が確認されたこと,子実含水率が22%以下の子実を吸水させると硝子率が低下したことから,登熟期後期の硝子率の低下は,降雨による乾燥子実の吸水が関与していると考えられた.一方,子実含水率が30%を超える子実は吸水しても硝子率が低下しなかった.収穫前の降雨時において,開花の遅い高位節分げつは開花後日数が短く,子実が乾燥していないことから,粉状質化が起こらず硝子質粒が多く発生したと推察された.また,子実着生位置別では開花後35日~40日において,穂の下段ほど子実含水率が高かったことから,穂の下段ほど硝子質粒が多く発生したと推察された.
- Research Article
- 10.1626/jcs.94.294
- Jul 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- Yoshinori Ban + 2 more
「きぬあかり」は愛知県が育成した収量性の高い日本麺用コムギ品種である.2016年以降,県内コムギ作付面積の約8割にあたる4500 ha前後で栽培され,2018年から2020年には10 aあたり収穫量が3年連続で全国1位になるなど,当県コムギ収量の向上に貢献してきた.本研究は,愛知県内コムギ実需者の要望等により設定した目標「子実タンパク質含有率9.0~9.5%」並びに「実収量10 aあたり480 kg」達成を目指し,生育期間中のコムギの生育状況から生産現場で簡易に追肥窒素量を診断できる手法を開発することを目的に実施した.まず,2カ年にわたり農業総合試験場内ほ場で播種時期と窒素施肥量の組み合わせ試験により作出した生育状況の異なる合計288の調査値を解析した.その結果,目標達成の目安となる成熟期の植物体地上部窒素吸収量は12~17 g m—2であること,茎立期の生育指標値(草丈・茎数・葉緑素計値の積)は同時期の植物体地上部窒素吸収量並びに成熟期の子実タンパク質含有率及び単位面積あたり収量などと高い正の相関があることを明らかにし,茎立期の生育指標値に応じて追肥窒素量を増減する手法を設計した.さらにその後2カ年にわたり,県内のコムギ生産者が栽培する栽培管理や生育の異なる49の現地ほ場において,設計した追肥窒素量診断法の検証を試みた.その結果,茎立期の生育指標値から診断した追肥窒素量を施用することで,慣行と比較して子実タンパク質含有率及び単位面積あたり収量が高まり,目標に近づける効果を明らかにした.
- Research Article
- 10.1626/jcs.94.271
- Jul 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- Maya Matsunami + 16 more
稲作における営農面積の拡大や温暖化環境に対応した省力化技術に資するため,近年,機械化が実用可能になった疎播苗の特性とその温度応答について東北地域の主要銘柄品種を用いて調査した.試験1では岩手大学において「あきたこまち」を3月下旬から6月中旬にかけて5回に分けて播種を繰り返し,疎播(乾籾60 g 箱—1),標準(同120 g箱—1),密播(同240 g箱—1)の3条件で育苗した稚苗および中苗の苗質を調査した.疎播苗は積算地温の上昇に伴う葉齢進展や地上部および根乾物重の増加が標準や密播よりも大きかった.また,疎播苗は草丈あたりの乾物重が大きく,他の播種密度よりも高い苗充実度を示した.試験2の東北地域の主要銘柄品種における疎播苗 (同65~80 g箱—1) と慣行苗 (同120~160 g箱—1) の比較においても,疎播苗は栽培地や品種に関わらず,積算気温が400~700℃日の範囲において慣行苗よりも高い乾物重と苗充実度を示した.いずれの試験においても疎播苗は温度1℃あたりの乾物生産量が他の播種密度よりも大きく,このことが幅広い温度域における優れた乾物生産能や苗充実度に寄与していた.したがって,春の異常昇温や大規模経営体での移植作業の遅れに伴う育苗期間の延長など,育苗時の温度環境が上昇した場合でも疎播苗は優れた苗質を維持できることから,移植時期が長期となる大規模経営体や温暖化環境に適応した技術であると考えられる.
- Research Article
- 10.1626/jcs.94.241
- Jul 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- Junichi Tobitani + 5 more
茎伸育型の異なるダイズ品種におけるTwin row栽培 (TR) の増収効果と収量構成要素からみた増収要因を2ヶ年にわたり検討した.供試品種として,有限伸育型「トヨムスメ」と無限伸育型「Brock」を用いて,栽植密度を8.3本/m2から55.6本/m2までの5水準を設置し,栽植様式としてTRと慣行栽培 (CR) と比較した.収量は,両品種で2ヶ年共通して,どの密度でもTR≧CRであった.このCRに対するTRの増収効果は,5栽植密度,2ヶ年平均して,「トヨムスメ」と「Brock」それぞれ107,111%と推定された.また,栽植密度と収量との間には2品種および両様式ともに2次の回帰式が適合し,最も増収効果の高い最適栽植密度は27~31本/m2と推定された.その時の増収効果は,「トヨムスメ」と「Brock」それぞれ110,120%で無限伸育型が有限伸育型に比べて高い傾向にあった.また,有限伸育型「ユキホマレ」と無限伸育型「OAC-Dorado」を用いた1年の試験においてもほぼ同様の傾向が確認できた.TR栽培における密植時の増収効果が無限伸育型>有限伸育型であるのは,密植にともなう分枝収量の減少のTRによる緩和に起因し,この分枝収量の減少の小ささは,密植にともなう分枝数の増加と分枝の一節莢数の減少の小ささに由来すると考えられた.
- Research Article
- 10.1626/jcs.94.328
- Jul 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- 史朗 三屋 + 2 more
- Research Article
- 10.1626/jcs.94.199
- Jul 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- Rintaro Kondo + 2 more
日本のダイズ栽培においては,湿害による初期生育の抑制が収量低下の要因のひとつに挙げられる.また,農業経営の大規模化が加速しており,広大な面積の圃場に対し数十日かけて播種作業を行うような事例も存在する.広大な面積すべてに対し排水対策のような初期生育改善策を施すことは困難であるため,圃場ごとに優先順位をつけて対策を行うことが望ましい.加えて,生産者圃場においては個体の枯死等により圃場内で栽植密度が変動しうる.よって,生産者圃場における初期生育を改善し,ダイズ生産の安定化を実現するためには,播種日と栽植密度の変異に対応できる初期生育評価手法が必要だと考えられたため,本研究ではその開発を目的とした.品種「リュウホウ」を対象として,播種後40日程度までの葉面積を積算気温で記述する葉面積モデルのパラメーターを,3栽植密度×4回栽培の試験に基づき求めた.このモデルによる算出値を生育の典型とし,別途測定または推定した実際の葉面積との比を取ることで,生育点数を算出できるようにした.また,播種から葉面積モデルの始点までの日数を積算気温から求める式を5回の播種試験から求めた.これらの式を基に,生産者圃場において栽培されたダイズの生育点数を求め,生産者圃場での適用可能性を評価するために収量との関係を2年間にわたって調査した結果,両者の間にr = 0.70(p < 0.01)の相関関係があった.今後は,本研究の手法における他の品種,地域,栽植様式に対する適用可能性を検討しながら,実装範囲を広げていくことが課題になると考えられる.
- Research Article
- 10.1626/jcs.94.301
- Jul 5, 2025
- Japanese Journal of Crop Science
- Ichi Sasaki + 8 more
アズキに対する微量要素の増収効果を明らかにするため,灰色台地土である江別,淡色火山性土である帯広の2地点において,「エリモ167」と「きたろまん」に対して,ホウ素・亜鉛・マンガン (試験1) および亜鉛・鉄 (試験2) を含む肥料の施用試験を2カ年にわたり実施した.2地点ともに栽培前土壌における熱水可溶性ホウ素,可溶性亜鉛,交換性鉄の含有率は土壌診断基準値以下または下限値に近い含有率であった.無処理区に対する増収効果は,試験1においてFTE区 (く溶性ホウ素,マンガン),アグリエース区 (く溶性ホウ素,亜鉛,マンガン),水溶性区 (水溶性ホウ素,亜鉛,マンガン) それぞれ両試験地,両年,両品種平均で19%,13%,8%であった.資材中の亜鉛の有無による収量の差がみられないこと,土壌中のマンガン含有率から,増収効果はホウ素の吸収量の増加に由来すると考えられた.試験2における増収効果は土壌施用区 (く溶性鉄,亜鉛),葉面施用区 (水溶性鉄,亜鉛) それぞれ両年平均で20%,38%であった.葉面施用区が土壌施用区に比べて増収したのは,亜鉛および鉄の吸収利用率が高かったためと推察される.収穫後における土壌中ホウ素・亜鉛・鉄の増加量は最大でも0.2 ppm,1 ppm,5 ppm程度と極めて少量に留まった.両試験を通してホウ素360 g/10 a,亜鉛900 g/10 a程度の施用はアズキの増収に有効である可能性が示唆された.