Abstract
γ-アミノ酪酸のアゴニストであるムシモールを,粗飼料または濃厚飼料により飽食させたメンヨウの側脳室に投与した際に生じる採食行動の違いを検討した.妊娠•泌乳していない雌メンヨウ4頭を濃厚飼料で飽食させた後に,側脳室カテーテルから70nmolまたは正40nmolのムシモールを投与した.いずれの投与量のムシモールも投与15分以内に採食促進が生じ,この傾向は投与後30分まで持続した.またこの採食促進作用は用量依存的であった.この結果から,ムシモールは中枢神経に作用し,濃厚飼料による満腹感を抑制することが示された.次いで,先の試験で用いたメンヨウの内3頭を用いて,ムシモール投与が粗飼料および濃厚飼料摂取促進に及ぼす影響を比較検討した.いずれの飼料で飽食させた場合でも投与15分以内に採食促進が生じ,ムシモールは,粗飼料による満腹感も抑制することが示された.しかしながらこの採食行動誘発作用は粗飼料飽食時には濃厚飼料飽食時と比較し微弱であった.粗飼料飽食時にはムシモール投与30分以降には著しい採食抑制が生じ,その結果,投与後22時間の総採食量は低下した.一方,濃厚飼料飽食時には,ムシモールの採食促進作用は投与30分後まで持続し,またその後の採食抑制は粗飼料飽食時と比較すると弱く,ムシモール投与後21時間の総採食量は生理的食塩水投与を行なった場合と比較し差は認められなかった.この結果から,ムシモールによる満腹感抑制は粗飼料給与時と比べ濃厚飼料給与時で強い,またはムシモールは満腹中枢以外の中枢神経系に作用し,粗飼料の摂取を抑制する可能性があることが推察された.
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