Abstract

本稿では,世代間の階層移動を分析対象として,戦後日本にみられる長期的趨勢と国際比較の視点からみた日本社会の位置づけという2つのテーマを分析した.第1のテーマについては,社会の流動化の指標である相対移動率に着目すると,戦後日本の長いスパンを通して階層移動はおおむね安定しており,1995年から2005年にかけて日本社会の流動性が下がり階層の固定化が進展したという近年の「格差拡大論」を支持する結果は得られなかった.近年格差に関する関心が飛躍的に強まっているのは,おそらく人々が絶対レベルの移動の変化に反応しているためと考えられる.近年みられる社会の上層レベルでのパイ縮小と上昇移動率の低下,それと対応した下層レベルでのパイ拡大と下降移動率の上昇という変化が背景にあると思われる.第2のテーマの国際比較では,1970年代と90年代において日本社会が産業諸国の中でどのように位置づけられるかを検討した.相対移動率に着目すると,日本はどちらの年代でも,流動性がとりわけ大きくも小さくもない社会であることがわかった.全体移動率についてみると,日本は遅れて急速に発展した後発社会の特徴をもち,産業化の進展とともに全体移動率が顕著に増加したことが確認された.本稿では絶対と相対の双方の移動の趨勢を同時に検討することで,それぞれの社会の産業化の進展の軌跡と移動の趨勢の関連を考慮しながら,社会の位置関係を考察した.

Full Text
Paper version not known

Talk to us

Join us for a 30 min session where you can share your feedback and ask us any queries you have

Schedule a call

Disclaimer: All third-party content on this website/platform is and will remain the property of their respective owners and is provided on "as is" basis without any warranties, express or implied. Use of third-party content does not indicate any affiliation, sponsorship with or endorsement by them. Any references to third-party content is to identify the corresponding services and shall be considered fair use under The CopyrightLaw.